審判コラム

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審判に関するいろいろな話を書籍などから引用します。

★★ タイトル ☆☆

◆審判の仕事(抜粋)
 野球の審判員は、グラウンドにおける唯一の権威者です。ですから、規則についての十分な知識を身につけているのはもちろん、多くの人たちから信頼される人間でなければなりません。

 ・称賛されない仕事
 野球の試合で最も重要な役割を演じながら、最も称賛されないのが審判の仕事である。審判員は正しい判定を宣告して当たり前、もし僅かなミス・ジャッジでもあれば厳しく批判される。
 審判員にもファインプレイはあるが、不利な判定を下された選手からは恨まれる。

 ・男冥利に尽きる
 試合を左右するような重大な局面に責任を持って判定を下すのが審判の仕事である。この一瞬こそ、まさしく「男冥利につきる」思いであったし、また審判員としての生きがいを感じるものである。
 打球がフェアかファウルか、投球がストライクかボールか、走者がセーフかアウトか、ということは勿論、審判員の判断に基づいて下された判定は、すべて最終のものである。したがって判定を下す場合には強い信念を持つべきであり、自己の判定に疑念を持つようなことがあってはならない。

 ・「良い審判」の三条件
一、判定が正確であること。
 試合にのぞんでは、決してスポットライトを浴びるような行為をしてはならない。ただ判定を正確に行ない、試合を円滑に進あることに専念すべきである。審判員にとって大切なことは、多くの人たちから技術的、人格的に信頼されることである。技術的に信頼されるためには球審の「ストライク」「ボール」、塁審の「セーフ」「アウト」その他にわたって正確な判定を下すことが第一である。

二、明快なゼスチュアを示して、ハッスルすること。
 選手にも同僚の審判員にもあるいは観客にもよく分かるように明快なゼスチュアを示し、特にクロスプレーに対する宣告は大きい声で元気一杯やるべきである。しかし、ことさらに人の注意をひくような形をしたり、目立つような行動をするいわゆるスタンド・プレーはしてはならない。審判員(特に球審)がハッスルし選手をハッスルさせるように導くことによって、試合はスピーディ、になり活気づくだろう。審判員の努力でそれほど良くない試合でも良くなり、良い試合は更に良くなるものである。

三、ルールに精通し、豊かな常識を持つこと。
 審判員は礼儀を重んじ、しかも公平無私、厳正中立でなければならない。ホームチームとビジティングチームを区別するようなことがあってはならないし、他の人たちから疑惑の眼で見られることのないよう言動に細心の注意を払わねばならない。審判員にとっては、この外にも大切なことが多くあり、人びとから尊敬され信頼されるためには更にそれらを身につけなければならない。

  島 秀之助 著 「プロ野球審判の眼」より  

◆フェアプレイ元年
 アメリカの第31代大統領、ハーバート・フーバーは、「宗教とともに、スポーツの厳正なルールが、アメリカ国民のモラルを高めていることは間違いない。そして、アメリカでおこなわれているあらゆるチーム・スポーツの中で、野球こそがもっとも優れたものである」と話している。
 明文化されている規則も、そうでない規則も、忠実に尊重することがスポーツマンシップであり、フェアプレーである。ではフェアプレーとは何か?ユネスコ(国連教育科学文化機関)が「フェアプレー賞」の制定にあたって発表した一文を紹介しよう。
「フェアプレーは、スポーツの基本的な価値である。フェアプレーこそスポーツそのものであり、それなくしてスポーツはない。フェアプレーは、人間の誠実と寛容の精神、機会均等を尊重する精神のあらわれである。そこにみられる非利己的な行為こそ、真の文化を創造し、世界の平和を実現するうえで、もっとも必要なものである。フェアプレー・トロフィーは、世界中の人びとがもっとも望むトロフィーとなるだみう」
 このほかにもフェアプレーにはいろいろな定義がある。
審判の判定には厳格に従うこと、つねに全力でプレーすること、相手を尊重すること、勝利のときも敗戦のときも平静であること、など。そこには、スポーツの基礎ともいうべき内容が含まれている。
 フェアプレーは、もともとスポーツの用語だが、その精神は政治、経済、社会、文化など、われわれの生活すべてに生かさなけれぱならない。それがない社会生活は、人間の尊厳を無視したゆがんだ醜いものになってしまうであろう。

  神田 順治 著 「フェア精神が野球を楽しくする」より 

◆アマチュアリズム
自由意志に基づくところにスポーツの喜びがある

1953年5月28日に世界の最高峰エベレストの初登頂に成功したのは、ニュージーランド人のエドモンド・ヒラリーとネパール人シェルパのテンジンだった。そのヒラリーは「精神はアマ、技術はプロ」でありたいといった。私はこれがスポーツマンの理想ではないかと思う。

  神田 順治 著 「フェア精神が野球を楽しくする」より 

◆大リーグ選手のたしなみ
ボストン・プレーブスの名監督、サウスウォーズの“野球十戒”
①四球ばかり待つ選手は名選手になれない。
②バットを肩から離さなければ、三割打者にはなれない。
③走者が通った後の塁に送球する野手は、馬を盗まれてから馬小屋にカギをかけるたぐいだ。
④選手はつねに頭を上げていなければならない。
⑤ベースに滑り込みを試みるときは、断固として滑り込め。それをためらえば足をくじく。
⑥難球から身をかわすな。捕りやすい球はだれでも捕れる。
⑦つねに走り抜け。走り抜いてみなければ、その結果はわからない。
⑧試合を捨てるな。最後の一人がアウトになるまで、勝負はわからない。
⑨審判員の誤りをあまり深くせんさくするな。彼らも選手と同様に、完ぺきではありえない。
⑩コントロールを持たぬ投手は、何物も持たぬ投手である。

  神田 順治 著 「フェア精神が野球を楽しくする」より 

■ルール夜話
大切なのは「規則の文字よりその精神」

危険球の発端は……
さて日本でも、頭部に死球をうけ、長さ十センチの亀裂がヘルメットに生まなましく残った。そして今後、アメリカン・フットボールのような頑丈なヘルメットを着用しなければならないか否かということも議論になった。
これにたいしてセ・リーグの理事会は、アグリーメント(試合協定事項)に、「投手の投球が打者の顔面、頭部、ヘルメットに直接当たったとき、投手は直ちにその試合から除かれる」を加えた。
ボールが当たれば、それが故意の投球であるか否か、速球だろうがカーブだろうが、スローボールだろうが、避け方が未熟だろうが等々…を問うことなく、投手を退場にすることは審判は楽であろう。しかし判定が難しいからということで規則を変更することは、野球の本質を損なうことになる。
審判員はいかなる場合でも、判定をするのに最良のところに位置して裁定しているとの自負があると思う。だから難しい判定を回避して、ダスター(ボールが巻きおこす風が打者のユニホームの胸のあたりのほこりを払いおとすほどのスピードのある投球)のような最高の投球技術を、一律に危険ときめつけないでもらいたい。そのため審判は、故意の投球か否かを見抜く洞察力を会得してほしい。

逃げたら死球とせず
むかしベースボールを野球と訳した中馬庚は、1897年に『野球』という本を書き、その本の中にアメリカのルール書の全訳を載せた。その大見出しの「デッド・ボール」のところの第24条では「投手の投球が打者の身体又は衣服に触れることをいう」とあるだけで、この投球はボール・デッド(競技停止)であるということは、ここには書いてない。その後の第39条「打者が走者となる場合」の第4項「投球が打者の手及び前腕を除く他の部分又は衣服に当れる時、但し球に当らんとの意思を以て是れを為せりと審判が認定せるときは此の限りにあらず」となっている。この第4項だけが大見出しの「デッド・ボール」のことだと思って"死球"と呼ぶようにして、今日まできている。
加えて明治時代は武士道野球だから勇気ある行為を賞揚して、以下のように死球の規則を書き改めてしまった。
「デッド・ボール。投手が制球を乱し、投球が打者の身体に強く当りたる場合、審判官は“デッド・ボール、テーク、ユーアー、ベース”と宣告し、打者に一塁を与う。然れども投手の投ずる猛烈なる熱球を恐れて幾分なりとも避くる体容ありたるときは、前条の宣言をなさず、只単に“ボール”と宣す」(大日本体育会教授、高橋忠次郎著『ベースボール術』より)

   神田 順治 著 「フェア精神が野球を楽しくする」より 

■野球規則
9ボール、4ストライク 遊びから勝ち負け重視へ
今回は野球規則そのものの移り変わりをみてみたい。

菱形で野球が誕生
1845年。現在と同じく塁間の距離を90フィートとする“ダイヤモンド“ができた。このときからベースボールは誕生したといえる。
"ダイヤモンド"を考えた人物はアメリカ・ニューヨーク州のアレキサンダー・カートライト。野球の前身である「ニューヨータ・ゲーム」の常連だったこの若者は、ある日、グラウンドに菱形のダイヤモンドを書いて、「これでゲームをしたらどうだろう」と仲間にもちかけた。それがきっかけで同好の青年たちが集まり、「ニッカーボッカークラブ」という最初の野球チームがつくられたのである。
今日の"野球の父"と称せられるカートライトは、はじめて体系だった野球規則も考案した。それは今とはだいぶ異なり、たとえば先に21点をとった方が勝ちで、どちらかが21点に達するまで試合は何回でもつづいた。20イニング以上のゲームはざらにあったという。選手たちは特別のユニホームを着て試合をするようになった。当時は、ほほひげやあごひげをはやし、髪の毛も長くのばすのがはやった。長ズボンと飾りのいっぱいついたブラウス、麦わら帽子をかぶったその姿を想像するだけでおもしろい。しかも審判は、シルクハットにフロックコートという正装で、ステッキをもっていた。
投手は下手投げ。捕手はホームベースのずっと後方で守っていた。おそらく、当時のバットには使い古したクリケットの棒、荷馬車の長柄、斧の柄、熊手、木の枝などが使われ、たいへん危なかったからだと思う。
フライは直接とっても、ワンバウンドで捕球してもアウト。場外に打っても一塁しか与えられなかった。その後、打者が高めの球がいいとか低めがいいとか、投手に注文できた。要するに野球創世のころは、まず打者に打たせることが基本だったのである。
ストライク、ボールのカウントも大きく変遷した。はじめは9つのボールで打者は一塁に歩いた。その後だんだんボールの数が減っていき、四球になったのは1889年。ストライクも最初は4ストライクでアウトだった。数が変わっていったのは投手のコントロールが向上してきたことが大きな要因だろう。
1869年。シンシナティ・レッドストッキングス(現レッズ)が最初の職業野球チームとして名乗りをあげた。そして76年にはシカゴ、ボストン、ブルックリン、フィラデルフィアなど8都市のチームによってナショナル・リーグが結成された。のちにアメリカン・リーグもできて、1905年から正式なワールド・シリーズがはじまった。
遊びから勝ち負けが大きな問題になるにしたがって、ルールも大きく変わった。ボールをもった投手が、のんきになかなか投げないと罰金が科せられ、打者が投げるコースを投手に注文する規則も消えた。投手は上から投げてもいいことになった。さまざまな細かい決めごとが加わり、1904年には形式の整った規則書ができた。

問題のつど規則を改正
1950年。これまでの規則は、まったく形式の異なった新しい配列で編集し直された。新ルールは打者、走者、投手など10章に分けられ、記録の仕方もより厳密にした。これが、いまの『公認野球規則』の原本である。その後も何か問題が出てくれば、そのつど規則は改正されている。私は野球の規則ぐらい厳重なものはないのではないかと思う。
一方で、勝つためにアンフェアな手段を用いるチームや選手が後を絶たない。こうした行為を禁じるルールや罰則も強まっているが、なによりも肝要なのは一人ひとりの指導者、選手にスポーツマン精神を根づかせることである。
『公認野球規則』は2015年に再編集された。

     神田 順治 著 「フェア精神が野球を楽しくする」より 

■ストライクゾーン考
勝負分ける1球の判定 変わってきたそのルール

野球の球審の難しさは、打者にすれば相手投手はコーナーすれすれに“ボール"となる球を投げてくると思い、反対に投手の方はコーナーいっぱいにきちんと“ストライク"を投球していると思っているところである。

「審判は必要の悪玉」
己の立場、立場で自分の有利な面を主張するので、1球の判定が勝敗の分岐となった時には、有利な判定をえた側からは、名審判といわれるが、不利な判定をされた方からは「キル(殺せ)・ザ・アンパイア」の怒号がとぶことになる。そして中立のファンからは「審判は"必要の悪玉色といわれる。
 1931年秋、来日した全米オールスター・チームに随行したナショナルリ一グ審判経験6年のいちばん脂ののっていたJ・リャードン審判員に、6大学の審判員がストライクの範囲について質問した。当時は「ストライクゾーン」という用語はなかった。「6大学のリーグ戦ではボール全体がホームベースの上空を確実に通ることが必要であると決めている」とのべたのにたいし、リャードン審判は「投球がホームベースのどの部分でもかすればストライタである。上下の限界は打者の打撃姿勢によるから、それは審判が判断しなければならない」と答えた。それではストライクの範囲が拡大されて、アウトコーナーの遠めの投球には打者が全然手が出ないことも多くなると思うがと反問したところ、大リーグの名審判はこう回答した。「アウトコーナーの遠いところをスレスレに通る球を投げることができるコントロールを持っている投手はおそらくいないだろう。万一いたとしても、その投手の偉大さを認めるのみである」当時のストライクの規定は、「投手が定位置に立ち打者に面して投げた球で、地面に触れる前の本塁上のいずれかの部分を通過し、打者のひざより低からずまたその肩より高くないもの、審判者はこの球に対してストライクを宣告する」となっていた。

ルール・ブックの大改訂
 ところが1950年のルール・ブックの大改訂で、ストライクの項は「バウンドせずにストライクゾーンを通り打者が打たないもの」となり、上記のようなストライクゾーンなる新語が挿入された。「ストライクゾーン」とは、打者が自然の打撃姿勢をとった時のわきの下からひざ頭までの間の本塁上の空間をいうのである」(図)
 米国では60年代にゾーンの高めをわき下から肩の線まで上げる変更を4年間おこなったが、日本は一貫してわき下の線を守ってきた。
 さて、88年に米国は従来と異なる発想でストライクゾーンを次のように改正した。「ストライクゾーンは肩の上部とユニホームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の上部のラインを下限とする本塁上の空間をいう」。日本では翌89年からこのルールが採用された。
 1920年代に活躍したアメリカンリーグの名審判、ビル・ギャスリーは「投球に“くさい球"はない。それはストライクかボールか、どちらかである。しかし打者にすれば投手はつねにボールばかりを投げ、投手の方はストライクばかりを投げていると主張する。野球はこのような競技なのであろう」といっている。
 結局、いくら厳密にゾーンを定めたところで、高低やコーナーぎりぎりの球には両者の思惑がはたらく。それを正確に裁くのが審判であり、ゲームに携わる者はその判定を審判にゆだねたのであるから、いちいち文句をいわず謙虚に従うことはあたり前のことだと私は思う。

神田 順治 著 「フェア精神が野球を楽しくする」より 

■社会のあるところルールあり
「社会のあるところルールあり」といわれます。スポーツの世界もそのとおりで各人がその意志を主張し合えば、スポーツ競技など到底、成立するものではありません。統一を保ち、秩序をつける仕組みがどうしても必要となり、かくしてスポーヅルールがその役割を担って登場することになります。

 ・スポーツルールが奉仕する基本的な目的
   -あらかじめ想定された基本的パターンに即したゲームの再現性の保障
    そのことがあって、昨日行われた野球のゲームも、明日行われる野球のゲームも、私たちは
    同じ野球のゲームとして扱うことができるのです。
   -スポーツの記録に客観的な意味を与えて相互の成績比較を可能にする
    タイムそのものを競い合う陸上競技や水泳だけでなく、今日では野球やサッカーといった球
    技にも記録はつきものの概念となっていて、それは選手の経済的価値などを評価するに際し
    て重要な材料として用いられています。
   -スポーツ競技を賭けの対象として成り立たせるためにルールは存在すると考えても決して誤り
    ではありません。

   以上のいずれの目的にルールが奉仕するとしても、それは最大限、スポーツから冗長さを排し
   《面白さ》を保障するものでなくてはなりません。

 ルールが奉仕するこの目的のなかに、道徳的な性格の価値観が顔をのぞかせることは基本的にあり
ません。たとえばフェアプレーやスポーツマンシップを選手に強いるあの倫理的な規則にしても、人
間が行うに値する意味を備えた活動としてスポーツを存在させようという意図に即して生み出された
ところの、あくまでも手段としての行為規範にほかなりません。
 そもそもやってもやらなくてもよい遊びの一形式であるスポーツは、もともと倫理的にまったく無色の活動としてあり、したがってこの観点からすれば、その傷つきやすい倫理的無色性を極力保護するための手段としてあるのがルールであると、そのように考えることも許されるでしょう。

 次回:スポーツの場でルールが担う機能について(三つの提案)【延期】

  守能 信次 著 「スポーツルールの論理」より 

■古典:審判システム一人審判制(1953.7 ジョージ・バー 野球審判の手引きより)

〔訳者注〕一人だけで試合を審判するという原始的な方法は今日では無縁のように思える。たしかにそうかもしれないが、アンパイアリングというものをよく理解するために、また複数制の審判システムの利点がどこにあるかを知るためにも、 一度この〝一人審判制〟 の項を読んでみることも無駄ではなかろう。

 
 近代プロ野球が審判員に要求する技術的な標準というものが非常に高度になってきたので〝一人審判制〟 は駆逐されてしまった。今日では多数制の傾向を示しており、マイナー・リーグでも、試合には複数制の審判システムが用いられている。アメリカン・リーグやナショナル・リーグでは、通常〝四人審判制〟が用いられている。
 大学やセミ・プロの試合では、審判員が一人だけでむずかしい任務を適当に処理しているのをたまに見ることもあるが、審判員の多くは審判業を始めるときには、たいてい草野球からスタートしているものである。したがって、一人でこのむずかしい任務を行なう最良の方法を、大いに研究する価値がある。
 さて〝一人審判制〟には複数制にない技術的な利点がある。それはこのシステムには絶対に〝踏み越し〟がないということである。
 複数制だとある審判員に〝踏み越し〟があっても、俊敏な仲間がだれにも気づかれないようにこれをカバーしている。
 しかし、だれもカバーしなかったとぎは、いくらのんきな見物人でも、ある審判員の〝踏み越し〟に気づくだろうし、その審判員を過少評価するようになってしまうものだ。
 一人審判制で普通行なわれる手順は、ホーム・プレートの後方に捕手より一歩下がって位置し、そして試合を開始することである。そして打者が一塁に出たら、審判員はダイヤモンドの中にはいって、塁に走者がいなくなるまで投手の後ろで働く。だが私の考えでは、これはよい方法とは思えない。
 俊敏な審判員は、ホーム・プレートが重要であることを絶えず心がけていなければならない。ホーム・プレートこそ試合のアクションが集中し、プレーがここで発生し、またプレーが記録に
残るまで、ここで終わらねばならない場所だ。したがって二つの例外を除いてホーム・プレートこそ審判員が最初からそこに位置し、そこに留まるべき場所である。というのは、ダイヤモンド
のまん中からでは、審判員は一塁や三塁のベース上へ鋭く放たれ、そしてまた飛び上がるヒットのコース、あるいはファウル・ラインに転々とするバントをすくい上げるプレーなどを見分ける
ことは困難であろう。これらのプレーを誤審すれば、試合の進行がとんでもない方向に変わって
しまう。
 二塁が無走者で打者が一塁に出たら、審判員はダイヤモンドにはいらなければならない。そして一塁での牽制プレーとか、二塁への盗塁プレーが終わったら、すぐホーム・プレートの後ろの位置にもどるべきである。塁に走者がなくなるまでダイヤモンドの中に留まると、審判員は一番むずかしい地点から投球を判定することになる。このことは明らかに、得点機にある走者が出ている場合、走者がないときよりも、身体を低くして投げなければならないという不利を投手に与える。事実、投球をダイヤモンドの中から判定するのはむずかしいものだ。
 ダイヤモンドの中で最良の位置を選定するのは容易なことではない。もし投手のすぐ後ろに立っておれば、審判員はマウンド上にいることになるから、低い球を誤審しやすい。と言って、投手より1ヤードかそこら下がって位置すれぽ、投手のフォロースルーがしばしば審判員の観察をあいまいにする。そこで最良の妥協案は、ホーム・プレートよりまっすぐな線で、マウンドの後方に四、五フィート下がって位置することである。この地点からならば一塁方向へ二歩早く歩めば牽制プレーが見られるし、また右あるいは左へ1歩回れば二塁盗塁を完全に見ることができる。セミ・プロの審判員には、投手の右側四、五フィートの地点に立つという悪い習慣を身につけているものがいる。このような位置からでは判定のためのよい角度がとれないので、紛争を引き起こすにちがいない。
 一人で審判するときは、審判員は常に爪先で立って警戒していなければならない。可能と思われるあらゆる状況を考え、それを予想し、そして如何なる不慮の事態が発生してもカバーできるよう、絶えず用意していなければならぬ。また絶えずボールを注視し、順当にプレーを裁定しなければならぬ。大変なことだが、体は一つなのに同時に二ヵ所に自分の身を置けるよう、常に用意していなければならないのである。
 打者が内野に打球したら、審判員はただちにマウンドと一塁ベースの中間に駆けだしてプレーを裁定しなければならぬ。この地点からなら審判員は、もし野手のワイルド.スロー(悪送球)や打者のエキストラ・ベース・ヒット(長打)の場合に、次のベースを狙う走者を注視することができる。またこの位置に進出しておれば、審判員はあらゆる点で走者を見守ることができるのである。
 一人審判制は誤まった経済観に立つもので、このことはあらゆるプロ・リーグでも認められている。如何に有能な、そしてエネルギッシュな審判員であっても、同時に一ヵ所以上に位置することができるはずがないからである。二時間もかからないテンポの早い試合に、あらゆる状態を適当に裁定するには、少しぐらい経費を支出しても、もう一人審判員を増やすのが当然である。
 

■古典:審判システム二人審判制(1953.7 ジョージ・バー 野球審判の手引きより)
〔訳者注〕二人審判制というのも日本にはない。しかし、フィリピンのマニラ湾リーグとか米国のマイナー・リーグなどでは、このシステムがさかんだ。
三人制から四人制へ審判システムが合理的な方向へ進むプロセスを知るためにも、二人制システムについて学んでおくことも無益とは言えまい。
 二人審判制は、現在では、ほとんどのプロ・リーグの標準となった。これなら通常発生する場面の九十パーセントは十分にカバーすることがでぎる。ずっと一つのチームを編成して働く二人の優秀な審判員は、ほとんどわからないほどらくに彼らのプレーをカバーし合う。これら二人の審判員は常に正しい時に正しい場所にいて、しかも裁定がくだされるまで、彼らの存在が気がつかれないほどスムースに、その任務を成し遂げうるのである。
 球審は塁上のプレーを受け持つ。塁上に一人以上の走者がある場合には、一番先きの走者に対しては、ヒットの最終運命が確かめられるまで球審が責任を持つ。球審はダイヤモンド内にはいって一番先きの走者に注視し、走者による三塁べースヘのタッチを注意し、この三塁とホーム・プレートのプレーを裁定する。塁上に二走者が出ていて、さらにヒットが出て先頭の走者が文句なく生還する場合には、球審は走者による三塁とホーム・べースヘのタッチを見る以外は、他に注意を払わなくてもよい。次に球審は第二の走者に注意し、裁定をくだす用意をする。一方塁審は、すべての走者による一塁と二塁べースヘのタッチを確かめると同時に、ベース・ランナーになっている打者を裁定する。
 もし打者が自分の打撃で三塁まで進出したら、この打者のプレーは塁審がカバーする。また塁審がベースで裁定したプレーが第三アウトならぽ、この塁審は急速に大声でやらねばならぬ。そうすれば球審はその同じプレーで、先きの走者が第三アウトが行なわれる前に生還していたかどうか裁定できる。
 試合開始にあたって、二人審判制においての塁審が占める正しい位置については、いろいろ見解の相違がある。筆者は一塁手の一歩後ろに右翼のファウル・ラインをまたいで立つことをすすめたい。ここで一歩というのは、ファウル・ラインを襲う打球に対し、一塁手の飛びかかるプレーの後ろに行くのに、塁審がそれだけ時間を要するからである。もし塁審が野手と同じ線上に立っておれば、野手は塁審との衝突を避けるため、彼の捕球を遅らせるかもしれず、そうすれば捕球が不成功に終わった場合に立派な言い訳ができて、塁審に抗議することになる。
 もし一塁手の背後にさらにもう一歩、つまり二歩下がって位置すれば、塁審は身構えるに必要な〝足の蹴り出し〟が遅れてしまう。前記の位置(右翼ファウル・ラインをまたいだ一塁の後方)からなら、一塁上に起こるプレーを裁定するのは容易なことである。
 ボールが三塁方面に打たれたら、塁審はすばやくダイヤモンド内ヘダッシュし、一塁と二塁とを結ぶ線の投手寄り二、三フィートの地点を占める。ボールに注意しておれば、塁審はワイルド・スロー(悪送球)にぶつかることもなく、プレーを自分の前で直接見ることができる。もしワイルド・スローが起こったら、塁審は二塁ベース寄りへ五、六フィート駆け出す。プレーの起こりそうな場所にあらかじめ移っていれば、常に審判員はスムースな演出で裁定できるものである。公平な選手だったら、もし審判員がハッスルしてプレーをありのままに判定しようとつとめれば、誤審の可能性が見えても、しばしば見逃がしてくれるものだ。ところが反対、審判員が裁定した通りのプレーであっても、審判員がいかにも頼りなさそうな格好で判定したりすれば、きびしい抗議にぶつかることがある。
 遊撃手が送球する場合には、塁審はダイヤモンド深くはいるわけには行かないが、前述した一、二塁間の位置を占めることはできる。そうすれば目の前でプレーが見られ、ワイルド・スローでも起これば、四歩か五歩有利な位置にあると言える。多くの優秀な審判員は、両足をファウル地域に踏んまえて一塁手のすぐ背後に立ち、一塁ベースのわきで裁定するが、彼らの観察も多分前述の位置同様正しいかもしれないが、オーバースライドの場合は明らかに不利である。この場合には、これらの審判員は常に若くてより敏捷な選手によって、二歩か三歩のハンディキャップをつけられてしまう。その結果として、勢い二塁ベースの裁定をプレーの後方からやるという拙いことになる。世評とは反対に、多くの審判員は足が速いとはいうものの、三十ヤードの距離を若い選手に四歩も遅くれてスタートしたとすれば、その選手を走り負かすなんてわけには行くまい。
 球審と塁審のそれぞれの義務は、野球規則の九・〇四のAとBに明示されている。一、三塁に走者があり、ダブル・スチールが企てられたら、球審はホームに一番近い走者―――――三塁だろうが、三、本塁間だろうが、ホーム付近だろうが――――に注視して裁定する。これは第一送球が行なわれたあとのことである。もし第一球が三塁あるいは投手、または内野手に投げられ、それからまたさらに三塁へ投げられたとしたら、塁審が三塁のプレーの責任を持つ。
 必ず野球規則九・○○に示されている審判の権利、義務、責任についての諸規則を熟続、研究してほしい。さらに野球規則九・○○に出ているすべての注、および審判員に対する一般指示についても研究せよ。これらは非常に重要である。
 注意=二人審判制では、審判員の仕事はいろいろと多い。しかし、いつでも二人が注意深くボールに注視していれば、試合を適確に処理することができるし、またそうしなければならない。
-- 二人審判制の図解 --
▼〔第一図〕塁上に走者なきとき

◇球審◇
1 もし塁審がファウル・ライン深くに放たれた強い打球を見るため、あるいは野手がその打球 を捕るか、落とすか見きわめるためファウル・ライン深くへ移動したら、二塁あるいは三塁ベ ースまで、ずっと打者の走塁を注視し、通過した各べースヘのタッチを確認する。
2 大きなフライが打たれた場合には、塁審が打球方向に動いたら、二塁まで打者の走塁を注視 する。これは二人審判制での最大のプレーの一つ。二人が正しくカバーすれば、まず正当に審 判しているものと言える。
3 ハッスルして、いつでも走者の先きに立つように……。
◇塁審◇
1 クリーン・ヒヅトが出たら、内野を横切って二塁あるいは三塁まで打者をずっと注視する。
2 好打が右翼へ飛んで、野手がショート・バウンドで捕えようとしたら、出て行け。もし打球がショー ト・バウンドで捕えられたら、球場にいる全選手にそれがわかるように動作で示す。野手がバウンド せずに捕球したら、打者にアウトを宣し、同時に動作で示す。
3 夜間試合の場合、無走者のとき大きなフライが飛んだら、必ず出て行く。塁審と球審の二人で、すべ てのプレーをどういうふうにカバーするかを了解し合え。何となれば、困難なプレーが起こった場合 に、互いに助け合えるからである。
4 ハッスルせよ。

▼〔第二図〕走者一塁のとき

◇球審◇
1 すべての打球のフェアかファウルを裁定する。つとめて前進して打球をよく見る。とくに低く強い打 球に対しては、早く動かなければならない。
2 ヒットが出て三塁にプレーが起こる可能性があったら、三塁ベースへ行く。つまりプレーが初めから 見られるよう早く動いて、できるだけ、それに対しての好位置を占めるようにすべきである。
3 一塁に走者がいたら、常に二塁へ近づく。こうすれば自分自身で任務を全うすることができるからで ある。
◇塁審◇
1 二塁ベース右寄り二十フィートの位置から一塁を見て牽制球に注意する。
2 同じ位置から二塁盗塁に気をつける。もし盗塁が企てられたら、二塁への送球をフォローする。また プレーがかけ離れていたら、ベースに近寄る必要はないが、きわどいプレーだったら、そのプレーの 鼻先きにいるようにする。
3 打者と走者による一塁と二塁べースヘのタッチを見ている。
4 内野手あるいは外野手の邪魔をしないで、しかもプレーがよく見られる好位置を占めるように気をつ ける。
5 ダブル・プレーが企てられたら、ボールの行方をフォローし、絶えずぎわどいプレーの鼻先きにいる ようにする。

▼〔第三図〕走者二塁のとき

◇球審◇
1 すべての打球のフェアかファウルを裁定する。つとめて前進して打球をよく見る。とくに低く強い打 球に対しては、早く動かなければならない。
2 もし先頭の走者が二、三塁間に挾まれたら一塁に出た打者を担当し、牽制球に注意して、もうこれ以 上プレーが起こらないと見るまで一塁審判をつづける。
3 ヒットが出たら、先頭の走者が三塁ベースとホーム・プレートを踏んだかどうかを注視する。
4 内野ゴロが打たれたら、本塁でも三塁寄りのファウル地域内に留まっている。
◇塁審◇
1 投手の右寄りで、遊撃手と二塁ベースの中間に位置する。
2 外野へ大きなフライが飛ばされたら走者のそばに位置し、もし走者が捕球後三塁に進めば、捕球後ベ ースに足をつけていたかどうか、またその走者が三塁にはいるまでの動きを注視しなければならない
3 一塁に緩慢なプレーが起きたり、内野へ打球が打たれたとぎには二塁に留まっていて、送球に注意し ている。
4 ヒットが出たら、打者の一塁べースヘのタッチと、打者が進塁をつづけたら、他のベースを踏んだか どうかを注意する。内野への打球に対しては、送球プレーを担当する。各投球ごとに位置を少しずつ 変え、かつ走者を注意深く見ておれば、三塁盗塁が企てられた場合、間に合わないというようなこと もない。

▼〔第四図〕走者三塁のとき

◇球審◇
1 すべての打球のフェアかファウルを裁定する。つとめて前進し、何も障害なしに打球を見るようにす る。
2 フライが上がった場合には、三塁走者がベースに足をつけているかどうかを注意する。
3 ベース・ラインに鋭いヒットが出たら、ホーム.プレートの後ろから進み出て、もしプレーがきわど かったら、動作で示す。
◇塁審◇
1 二塁の左寄り二、三歩のところへ位置する。また捕手による三塁への牽制球を裁定できるように、三 塁ベースにそって並ぶ。
2 内野への打球で、一塁か三塁にプレーが起きたら裁定する。打者がヒットを打って進塁をのばそうと したら、ずっとその打者を追って注視する。
3 外野へ大ぎなフライが飛ばされ、そして二死以内だったら、先頭の走者が塁を早く離れないように見 守る。
4 ヒットが出たら、打者が一塁を踏まずに近回りしないように注視する。すべての走者によるべースヘ のタッチを見るようにつとめる。何となれば、仲間の塁審が走者や野手の蔭になってよくわからず、 裁定の応援を頼まぬとも限らないからである。

▼〔第五図〕走者一・二塁のとき

◇球審◇
1 すべての打球のフェアかファウルを裁定する。
2 内野フライを注視する。
3 ヒットが出たら三塁寄りに動く。
4 もし先頭の走者がホームへきたら、三塁ベースの方向へ後ろ向きにもどり、その 走者によるホーム ・べースヘのタッチを見る。
5 もし第二走者が同じプレーで三塁に進も、うとしたら、三塁ベースでそのプレーを見守る。もし内野 ヒットが出たら打者を担当し、打者による一塁べースヘのタッチを見る。またもしプレーが三塁で起 こったら、三塁を注視して塁審を援助する。
6 外野フライが打たれたら、野手の捕球を見る。もし先頭の走者が捕球後三進したら、その走者を担当 する。常にフライ捕球後における走者によるべースヘのタッチを見て塁審を助ける。
◇塁審◇
1 内野フライを注視し、球審と同時に裁定をくだす。
2 ヒットが出たら、第二走者による二塁べースヘの、また打者による一塁べースヘのタッチを注視し、 それから二塁へ進む打者を担当する。
3 内野ヘボールが打たれたら、送球プレーを担当する。
4 外野フライが打たれたら、一、二塁走者がベースにいるか、そして進塁するとしたら、捕球後ベース についているかどうか注意する。つとめて自分でプレーを見るのに最良の位置を占めることを心がけ るようにしなければならない。また、内野手あるいは外野手のじゃまにならないように気をつける。 むろん野手のかくし球やボークにも注意する。
〔訳者注〕一人審判制とか二人審判制というようなものは、日本では奇異の感をよび起こしそうだ。し かし、アメリカにあるというのは面白い。われわれに関する限りは、次の三人審判制を注視すべきだ ろう。


■古典:審判システム三人審判制(1953.7 ジョージ・バー 野球審判の手引きより)
 この三人審判制は大リーグやいくつかのマイナー・リーグで採用されてきた。これが適確に実施されれば、球場で起こりうるあらゆるプレーを完全にカバーできることを保証する。しかしこの三人制は、経営者側に言わせると、さらに五十パーセントの経費負担となるので、二人制を全都乗っ取るわけには行かない。
 何となれば、二人制は球場に発生する小さな部分を除いては、全体を適当にカバーできるからである。だが不幸にして、この小さな部分には二、三塁間のプレーというデリケートな部分が含まれており、もしまちがって裁定した場合、攻撃側に大きな不利をもたらすこともある。だがこの三人制なら、あらゆるベースにおけるあらゆるプレーに対し、一人一人の審判員が注意を集中することができる。
 この三人制では野球規則九・〇四に指摘されているように、球審がすべての裁定をくだす。しかし、一つの例外として、三塁ベースに位置する塁審がアッピール(抗議)を受けた場合、走者がフライの捕球前にべ-スを離れたかどうか、その判定をくだすという場合がある。
 試合開始の場合、塁審はそれぞれ一、三塁手の後方二、三フィートの個所で、べース・ラインをまたいで位置する。ナショナル・リーグの塁審--無走者の場合--は各塁後方のファウル・ライン上、または近くに飛んでくる打球を裁定する。球審は一、二塁上にバウンドした打球を裁定する。もちろん塁審もこれらを裁定して球審を助けることができる。
 この章に述べられる各プレーの研究をみれば、三人制が二人制より有利なことがよくわかる。いつでも走者が三塁上か、三塁を占めようとする位置にあるとき、審判員の一人がそこにがんばっている。プレーの状況がどうであろうと、このシステムはホームあるいは三塁ベースに起こるあらゆるプレーを完全に、またゆっくりカバーできるからである。

-三人審判制の図解-
▽〔第一図〕 塁上に走者なきとき

◇球 審◇
1 ボール、ストライクを宣する。
2  一、三塁ベースをバウンドして越す打球を裁定する。塁審が敏捷でべ-ス・ラインをまたいで適当な 位置に、いれば、これらベース上を越えて行く強打に対して大いに球審を助けることができる。
◇一塁審判◇
1 一塁ベースのプレーを裁定する。
2 右翼へ打たれた打球に対してはまず第一に、それがフェアかファウルか、それに対して野手が捕球し たか落球したかを確かめる。
◇三塁審判◇
1 二塁に起こりそうなプレーに対しては二塁方向へ移動する。その際、球審はダイヤモンドにはいって 一塁方向へ動き、走者が一塁ベースをタッチしたかどうかを注視し、さらにその後一塁への牽制球を カバーする用意をする。
2 もし走者が三塁打にしようとねらったら三塁へ急ぐ。一塁審判は二塁へ動き、二塁べ-スに起こるブ レーを担当し、球審はホームを守る。
3 左翼方面に打球が飛んだ際は、それがフェアかファウルか、それに対して野手が捕球したか落球した かを確かめる。一塁審判は二塁から三塁まで走者を担当し、球審はホームに留まる。

▼〔第二図〕走者一塁のとき

◇球 審◇
1 すべての打球に対し、次に起こるプレーを予想して三塁へ行く。
2 べ-ス・ライン沿いに打たれたゆるいバントまたはゴロに対してはホームに留まり、そのフェアかフ ァウルを裁定する。この種の打球を担当するのはいつでも、球審の任務である。
◇一塁審判◇
1 一塁手の後方一歩ぐらいの地点で、ファウル・ラインをまたいで位置する。
2 ヒットが出てプレーが一塁に起こらなかったら、ホームの方向へ移動する。それは球審が三塁へ出向 いた場合にホームに発生するプレーを担当するのによい位置が得られるからである。
3 外野フライが飛んだら、走者と並び、そしてホームヘ向いて動く。
4 いつもべ-スをあけないこと。
5 もし一塁牽制が行なわれたら、判定をくだせる位置にすみやかに飛び込まねばならない。
◇三塁審判◇
1 一、二塁線の内側で二塁ベースから十フィートぐらい離れ、そして五、六歩マウンド寄りのところへ 位置する。
2 左腕投手の場合は、右のような位置にいると、打者あるいは野手の視野を防害することもあるので、 そんなときには、右か左へ一、二歩移動すればよい。このように位置していて二塁の方向へ少し回る か、一歩踏み出すかすれば、二塁盗塁に対する完全な位置がとれるし、また悪投が起こった場合にも 、三塁でのプレーを容易にカバーできる。

▼〔第三図〕 走者二塁のとき

◇球 審◇
1 もし走者が二、三塁間に挾まれたら、一塁のベース・カバーに走り、打者による一塁べースヘのタッ チを見る。その際、一塁で走者のプレーが起こったら球審が裁定する。
2 一塁でこの種のプレーを担当するときは、送球の線から離れていなくてはたらない。
◇一塁審判◇
1 二塁ベースのプレーを注視する。二塁でのあらゆるプレーを見るには、二塁から一塁方向へ約十五な いし二十フィート離れ、ベース・ラインから三、四フィート内側にいることである。いつでも自分が プレーをカバーし、しかも、どの野手にも邪魔にならない個所に位置することである。
2 内野への打球のときは、一塁でのプレーを担当し、また二塁への牽制球に注意する。
3 もし打者がスリー・ストライクをミスし、捕手もその球をミスしたら、二塁での正規の位置からただ プレーを見ていればよい。何となれば、二塁への牽制球があるかもしれないから。
4 打者の一塁べースヘのタッチを見る。
5 右翼へ打球が飛んだら、一塁への送球に注意する。
6 むずかしい飛球には、出て行って、野手が捕球するのを見る。
7 外野フライに際しては、走者が塁についているかどうかを注意する。
◇三塁審判◇
1 三塁のプレーを担当する。
2 三塁線上に打たれた打球には、三塁手に密接してよく見とどける。捕球が困難と思われる外野へ高く 打たれた打球には、出て行く。

▼〔第四図〕 走者三塁のとき

◇球 審◇
1 ホームでのすべてのプレーを担当する。
2 外野フライが打たれたら、ボールをよく見た上、走者が塁についているかどうかを確かめ、アッピー ルが出た場合に裁定の援助となるようにする。
◇一塁審判◇
1 打者の一塁べースヘのタッチを見る。
2 外野フライには、もし打者が進塁をつづけるなら、打者を二塁で担当できる位置まで移動する。この ようにすれば、三塁審判も自分自身をも保護することができる。野手が落球して、走者が進塁をつづ ければ、自然二塁できわどいプレーが起こりがちであり、この場合、三塁審判にとって、二塁に間に 合うように出て行くのはほとんど不可能だからである。
◇三塁審判◇
1 もし低いライナーが打たれたら、好位置でそれが見られるように、鷹の目のようにして三塁にいなけ ればならない。
2 外野フライが打たれたら、まず三塁走者と並び、走者が捕球後塁についていたかどうかを見る。
3 ヒットが出て悪送球が起こったら、二塁で起こるプレーに備えて二塁べ-スヘ行き、さらにその走者 を三塁まで追いかける。
4 三、本塁間の挾殺プレーでは、もし最後のプレーが三塁か三塁近くで行なわれたら三塁審判が、ある いはまた本塁か本塁近くで行なわれたら球審が、それぞれ裁定をくだす。

▼〔第五図〕 走者一・二塁のとき

◇球 審◇
1 打者の一塁べースヘのタッチを見る。
2 ホームで起こるあらゆるプレーに対して、ホームの三塁側に移動して備える。
3 塁審のだれかがファウル・ラインに放たれた打球が確保されたかどうかを確かめるために移動したら 、球審はホームの前、あるいは塁審もできるだけ好位置に飛び出さなければならぬ。つまり各走者が 、すべてのベースをタッチしたかどうか見るためである。塁審がファウル・ライン寄り、または外野 へのむずかしいプレーを裁定しようとすることは、すでに球審を援助しているのであり、そこで球審
 は代りに各ベースを担当、走者によるべースヘのタッチを見ることになる。
◇一塁審判◇
1 二塁から約十五ないし二十フィート、そしてべ-ス・ラインから二、三フィート内側に位置する。
2 投手の一、二塁牽制球に気をつける。
3 ダブル・プレイでは二塁を注意し、一塁の方向へ後向きに走る。いつでも、きわどいプレーの近くに いるようにする。
4 もし二塁でのプレーがきわどかったら、そのプレーの鼻っ先きに出て裁定し、それから送球といっし ょに一塁方向へ向きを変え、そこでプレーを裁定する。このようなプレーでは、絶えずボールから目 を離さない。
5 外野フライが打たれたら、捕球、走者による触塁、離塁の動作が見られる位置に移動する。
◇三塁審判◇
1 三塁におけるすべてのプレーを担当する。また三塁ベースから動かずに、アッピール・プレーの裁定 を援助する。
2 外野フライの場合は、捕球後各走者が塁についていたかどうかを見る。
3 もし打球が三塁ベース・ライン沿いに強く放たれたら、ただちに出向いてそのプレーを裁定する。球 審はホームヘはいる先頭走者を担当し、さらに二人制同様、三塁へはいる第二走者を担当する。

▼〔第六図〕 走者ニ・三塁のとき

◇球 審◇
1 ホームでのすべてのプレーを担当する。
2 もし第二走者(二塁走者)が二、三塁間で挾まれたら、一塁のプレーをカバーしなければならない。も っともこれは第一走者(三塁走者)が生還し、打者が一塁へ出た場合である。この種のプレーでは、球 審はダイヤモンドの外側に移動する。そうすれば内野手の送球に対しても邪魔にならないし、また牽 制球などのプレーを明確にカバーできる。
3 打球が外野へ打たれ、しかもホームに、プレーが起こらないときには、走者がホームにタッチするの を見てから、三塁を注視する。
◇一塁審判◇
1 一塁と二塁を注意する。
2 第二走者を注意し、外野フライに際しては、走者が塁についているかどうかを見る。
3 走者のプレーと並行して注視し、アッピールのあった場合には、球審を援助する。
◇三塁審判◇
1 三塁でのすべてのプレーを担当する。
2 三塁への牽制球があった場合には、とくに三塁手を厳密に看視する。
3 塁を離れない。
4 外野フライに際しては、ボールの打たれた場所に応じてプレーと並行する。
5 もしボールがファウル・ラインに沿って打ち込まれたら、出向いて事実通りプレーを宣して球審を助 け、走者の三塁べースヘのタッチは球審に任せておく。

▼〔第七図〕 走者一・三塁のとき

◇球 審◇
1 ホームで起こるすべてのプレーを担当せねばならない。
2 他のすべてのプレーに対しても警戒しなければならぬ。そうすればアッピールのとき、仲間を助ける ことができる。つまり球審は、球場で起こるあらゆるプレーを見ることに努力しなければならないの である。
◇一塁審判◇
1 二塁に起こるすべてのプレーの鼻先きにいなければならない。
2 ヒットが出たら、一塁および二塁が明らかに見える位置を占めなければいけない。
3 一塁も眺められ、またボールも見える位置に立つ。始終前後を見回す。そうしてボールが捕球された とき、各走者のいる場所を知るようにつとめる。
4 打者の一塁べースヘのタッチを見る。
◇三塁審判◇
1 牽制球に対してはすべて一、二歩近寄る。
2 走者と並んで立ち、外野への大きなフライが飛んだときには、走者によるべ-スヘのタッチを見る。
3 走者が出たらファウル・ラインに沿って出て、むずかしい捕球になるかもしれないプレーに備える。
 もし捕手が二塁へ送球して、三、本塁間に挾殺プレーが起きたら、球審はホームに一番近い走者の裁 定をせねばならぬ。またもし捕手の送球が三塁へ、あるいは投手へ、あるいは他の内野手へ送られ、 さらにまた三塁へ送られ、しかもそのプレーが三塁もしくは三塁付近で終わった場合には、三塁審判 が裁定する。一塁審判は、一塁ベースから進塁しようとする走者を、一塁か二塁のいずれかでアウト
 にしようとする守備側の企図に対して、絶えず注意を怠ってはならない。

▼〔第八図〕 満塁-内野が前進または後退守備のとき

◇球 審◇
1 ホームでのすべてのプレーを担当する。
2 ラインに沿って打たれた強打に対しては出向かずに、ホームの背後から打たれたボールと一致する線 に並び、もしそれがきわどかったら、ジェスチャーを大きくして宣告する。
◇一塁審判◇
1 一、二塁を注視する。
2 ヒットが出たら、打者、走者の一、二塁べースヘのタッチを見る。
3 外野ヘフライが打たれたら、一、二塁を注視できるところに立ち、しかも同時にボールの進行を見落 としてはならない。
 ボールが内野へもどったら、そのプレーの方に移動する。もし内野手が後退守備をとっていたら、二 塁べ-スに近く、ベース・ラインに接近した内野での正規の位置をとる。しかし、内野手が前進守備を とっていたら、一塁手と二塁手を結ぶ線より二、三歩後退した、野手より離れたところに位置する。
◇三塁審判◇
1 三塁手の二、三歩後方に位置する。
2 打者がゴロを打ったら、三塁でのフォース・プレー(封殺)を警戒せねばならない。
3 フライが打たれたら、走者による触塁、離塁の動作に備える。
〔訳者注〕三人制のときの球審と塁審の動き方は以上の詳細な説明で十分理解できたことと思う。もう  一度念のために忘れてならないことだけをここに列記しておこう。
(1) 長打が放たれたときには、次に起こるプレーを予想して三人が右回り(ホーム・プレートから見て) するのを忘れないこと。
(2) 塁審が外野への打球をカバーに走るときは、球審が一塁での走者の触塁を見るこ
(3)  挾殺プレー --- ことに三、本間に走者が挾まれた場合 --- その走者のアウトかセー フかを判定し宣告するのはどちらかということを忘れないこと。三塁に近いプレーで走者がアウトに なれば三塁塁審が判定する。誤まって両者がそれぞれちがう判定をくだしたりすると大変なことにな る。
(4) 一塁に走者がいるとき、打球が内野に打たれたら、二塁近くにいる一塁塁審は、二塁を見ながら後 向きに一塁の方に走って行くこと。二塁のプレーが落着するの見てから一塁へ走り出すのでは、攻撃 側からも守備側からもその判定に疑念を持たれやすい。そして決して走りながら宣告をしないこと。 一たんぴたりと止まって
厳然と宣告をくだすように・・・・・。
(5) 外野フライのとき、走者による離塁が早いかおそいかを見落とさぬよう。
   これはアッピール・プレイであるから、守備側がアッピールしても、知らなかったというよう失 態を演じてはならぬ。守備側は1点でも許すまいとこうしたデリケートな点を虎視しているということ を念頭に置くこと。
(6) 三人の間で適当たサインをきめるのを忘れないこと。塁線を抜き去るような打球、あるいは外野の ファウル・ライン近くに落ちる打球に対してはとくにフェア、ファウルに関する小さなサインが必要 である。

■古典:審判員の本分(試合前と試合終了後)(1953.7 ジョージ・バー 野球審判の手引きより)
 審判員は、試合開始の少なくとも一時間前には球場に到着すべきである。こうすれば、らくに着換えができるし、また二試合ある場合にも、第二試合に対する着換えも準備できる。いつでも審判員は、できるだけ完全に服装を整えなければいけない。
 打者席は、試合のスタートから試合中にかけて、いつでもきれいにしておかねばならたい。ホーム・プレートは、第一に投手の指導標であり、また投手には、終始この目標を明確に見通す権利がある。そして夜間試合が増加するにつれて、ますますこのことが重要視されてきている。てきぱきとホーム・プレートをきれいにしていれば、審判員がハッスルしていることを現わせるし、また球場の観衆たちに知られぬように、ハケを使いながら行儀の悪い選手に忠告を与えるよい機会をつくることもできる。
 審判員は一試合に三百回か三百五十回ぐらい宣告しなければならないし、自分の判定をごまかすことは許されないし、また選手と口論ばかりして自分の注意力を散漫にすることも許されない。試合が終わったら、その日球場で起こったあらゆる出来事を報告書に記入し、リーグ会長に提出する。審判員は事実をまげて報告してはいけない。正直なまちがいをやっても罰せられることは少ないかもしれないが、事実を控え目に書いたり、ごまかしたりする審判員は、やがて雇い主である会長の信用を失ってしまうだろう。

■古典: 審判員の本分(球審の任務)(1953.7 ジョージ・バー 野球審判の手引きより)
2.球審
ホーム・プレートが見えるように、右打者には右側(向かって左側)、左打者には左側(向かって右側)に位置する。捕手がくだらないことを言うのを気にかけるな。捕手の気持を柔らげるための少しぐらいのおべっかは必要であり、やってもよろしい。あまり高目に基準を置いて投球を判定しないようにする。投手には、つとめて打者の胸文字と、ヒザの間に投球させるようにする。捕手の位置と動き、打たれたチップ、ことに打者席における打者の正規の位置に注視する。

ボールやストライクを、あまり早く宣告してはいけない。また球が自分の身体に当たっても、だれにも気づかれないようにする。そんなことで球審が弱さを見せたりすると、選手やファンは有頂天になって喜ぶものだ。だが反対に、そういう場合に平然としている球審には尊敬を払う。
終始プレーを追え。また、いつでもボールに注視せよ。目はボールより速いのだ。得点のチャンス濃厚のプレーが行なわれるときには、三塁べ-スが塁審によりカバーされているかどうかを確かめ、他の塁審が一、二塁に回っているときは、みずから三塁のカバーに出よ。また、野球規則に記されている球審の任務を熟知せよ。

ボール(使用球)の交換
審判員は、ボール・デッドとなって、すべてのプレーが終わるまで、投手にボールを手渡してはならない。フェアの打球または野手の送球がプレーイング・フィールドの外へ出た場合は、走者が与えられた塁に達するまで、予備使用球を渡してプレーを再開してはたらない。
規則5.12 ボールデッドになった後、投手が新しいボールか、元のボールを持って正規に投手板に位置して、球審がプレイを宣告したときに、競技は再開される。
投手がボールを手にして投手板に位置したら、球審はただちにプレイを宣告しなければならない。 
〔訳者注〕投手がプレートにつくことと、球審の"プレー"の宣告との二つの条件のうち、どちらが欠けても新しいプレーにははいれないという点に注意する必要がある。
かくし球などの場合、投手がポールを手にしたものと主審が感ちがいして、プレートに足をつけない
うちに"プレー"を宣告したとしても、この"プレー"の宣告は無効となる。

 球審はまたタッグ・プレー(野手が走者に球をタッチする)に注意する。終始選手をハッスルさせるようにつとめる。インニングが変わるごとに、命令口調にならないようにして、うまく選手を急がせる。審判員がハッスルすれば、のろのろしている選手もハッスルするようになる。フェアかファウル・ボールの裁定に際しては、他の塁審を援助する。また他の塁審といっしょにインフィールド・フライを宣する。
 球審がベンチから馬鹿にされて野次られたときは、その野次の張本人がわかったら、あとでベンチに行ってトッチめる。
 選手がケガをしたら、球審はその場から遠ざかっている。それは、球審の担当外のことだからである。観覧席に注意を払いすぎてはいけないし、また観覧席の方へ向かって立ち止まるようなことをしてもいけない。
 ストライクやボールを宣告するときに、節をつけてはいけない。そして、これらを宣告するとき、カを入れたモーションを使う。打者席をきれいに掃くときは、スタンドに面して背をフィールドに向ける。
 アッピール・ルール(抗議規則)をよく研究し、選手や監督に突っ込まれて動揺するようなことがあってはならない。決して球審は"伝書鳩″になってはいけない。そんなことでは長くつとまらない。

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